Thunderbird PortableからBetterbirdに移行した
先月末にレンタルサーバーをコアサーバーのCORE-MINIプランに移行しました。その都合でメール関連の移行(メールアドレスの用意やメールのコピー)も行ったのですが、コアサーバーのメールにおけるフォルダ管理の仕様が、記事執筆時点でのThunderbird(Thunderbird 144.0.1)にとってはやや不都合な物であることに気づきました。詳細は後述しますが、記事執筆時点ではBetterbirdがその問題に対処できているようなのでBetterbirdに移行することにしました。
BetterbirdはThunderbirdの元メンテナーが主導するThunderbirdのフォークで、Thunderbirdのバグ修正やBetterbird独自の機能が追加されたものとなっています。Thunderbirdとの互換性が維持されており、ThunderbirdのプロファイルはBetterbirdでも使用可能です。
https://www.betterbird.eu/
Thunderbirdはポータブル版が公式からはリリースされていませんが、PortableApps.comが提供するThunderbird Portableが存在し、私はそれを使用していました。Betterbirdにもポータブル版が存在し、今回そちらに移行することにしました。この記事は移行の理由についてと、Thunderbirdのポータブル版からBetterbirdのポータブル版への移行手順、そして日本語化の手順の備忘録です。
移行理由
Thunderbird上で試したところ、コアサーバーで管理しているメールアドレスはInbox(受信トレイ)と同じディレクトリに他のフォルダを作成できませんでした。これはコアサーバーが採用しているWebメールクライアントのSquirrelMailとRoundCubeの2つでも同様で、私の認識が間違っていないのなら、下書きや送信済み、ごみ箱の類もInbox内にサブフォルダとして作成する必要がある仕様のようでした。コアサーバーのこの仕様は、記事執筆時点のThunderbird(Thunderbird 144.0.1)において1点だけ問題がありました。
Thunderbirdには管理している各メールアドレスの同じ役割のフォルダを1つにまとめて表示する統合フォルダ機能があり、それを有効にすると例えば受信トレイや送信済みトレイは以下のような構造で表示されます。
- 受信トレイ(メールの総数)
- メアド1(メール数)
- メアド2(メール数)
- 送信済みトレイ(メールの総数)
- メアド1(メール数)
- メアド2(メール数)
ちょっと文字での説明が難しいのですが、コアサーバーのメールアドレスの場合、受信トレイ(サブフォルダではなく受信トレイ自体)に何かしらのメールがあればメール数の表示は正常でした。また、受信トレイを空にした直後はメール数の表示が消え、これも期待通りの挙動でした。しかしながら受信トレイが空の状態であっても、Thunderbirdを再起動するとなぜか受信トレイにメール数が表示されていました。
最初はThunderbirdのmsfファイルなどの破損が原因かと思いいろいろ試しましたがどうやら違うようでした。受信トレイが空なのになんの数が表示されているのかということですが、対象のメールアドレスの送信済みやごみ箱といった、「統合フォルダの表示では分かれているように見えるが実際には受信トレイのサブフォルダであるフォルダ」内のメールの総数が受信トレイ側に表示されているようでした。すごく気持ち悪い挙動です。
この症状を調べてみると、どうやらThunderbirdはサブフォルダのメール数の合計を表示する機能がデフォルトで有効になっていることが分かりました。つまりその機能と、統合フォルダの表示の仕様やコアサーバーのフォルダ管理の仕様との相性の問題で、受信トレイが空なのに受信トレイにメール数が表示されるという奇妙な現象が起きているのではないか、という仮説を立てるところまでたどり着きました。
該当の機能は設定エディターで「mail.folderpane.sumSubfolders」をfalseにすることで無効にできるようですが、なんと無効にしても何も変化がありませんでした。調べてみると記事執筆時点のバージョン(Thunderbird 144.0.1)ではどうやらこの機能が動作しないというバグがあるようでした。2023年からの既知のバグのようです。
https://bugzilla.mozilla.org/show_bug.cgi?id=1852171
修正を願うしか無いのかと思っていると、どうやら私がこの問題に直面する少し前にBetterbirdのsubredditで「mail.folderpane.sumSubfolders」についての投稿があり、それがBetterbirdのメンテナーの目に留まり、この記事を執筆する数日前にリリースされたBetterbird 140.5.0esr-bb14で修正されたようです。Thunderbirdではいつ修正されるか分かりませんし、これはBetterbirdに移行するしかないなと思ったのが移行の理由です。
Betterbirdのポータブル版への移行
Betterbirdのポータブル版は以下のようなディレクトリ構造でした。
- BetterbirdPortable/
- core/(Betterbirdの本体があるフォルダ)
- betterbird.exe など
- profile/(ポータブル版のプロファイル。最初は存在しない)
- BetterbirdLauncher.exe(ポータブル版のランチャー)
- core/(Betterbirdの本体があるフォルダ)
profileフォルダは最初は存在しません。ポータブル版のランチャーであるBetterbirdLauncher.exeを起動するとprofileフォルダが作成されるようになっています。
Thunderbirdからの移行手順はBetterbirdのサポートページで解説されています。これを読むに、Thunderbirdの上位バージョンからBetterbirdの下位バージョンへの移行は推奨されていないようです。今回は144から140への移行なのでそれに該当します。問題が発生する可能性はありますが、どうしても移行したいので移行します。プロファイル起因の問題が心配な場合はプロファイルの移行はせず1から設定した方が良いと思います。
Betterbirdはダウンロードページからダウンロードできます。記事執筆時点では日本語のポータブル版が提供されていないようなので英語のポータブル版で移行作業を行いました。日本語の言語パックは提供されており、日本語化は可能です。そちらについては後述します。
今回は以下のような手順で移行を行いました。
- Thunderbird Portableのプロファイル(”Thunderbird Portable/Data/profile”) をBetterbirdLauncher.exeと同じディレクトリにコピーする。
- profileフォルダ内のcompatibility.iniをリネーム或いは削除する。
- BetterbirdLauncher.exeを起動する
ポータブル版でない場合や、ポータブル版であっても他にプロファイルを用意していた場合はbetterbird.exeをコマンドラインで「-p」オプションを付けて起動させる必要があるかもしれません。
サポートページに解説がありますが、オプションの1つに「-allow-downgrade」があり、これは上位バージョンのプロファイルであっても強制的に起動するオプションです。その代替手段として先述の手順で触れたようにcompatibility.iniの手動削除があります。いずれかの方法を取らずに上位バージョンのプロファイルで起動しようとした場合、おそらく以下のようなエラーが発生して起動できないと思います。
You have launched an older version of Betterbird
A newer version of Betterbird may have made changes to your profile which are no longer compatible with this older version. Use this profile only with that newer version, or create a new profile for this installation of Betterbird. Creating a new profile requires setting up your accounts, calendars and add-ons again.
日本語化
- ダウンロードページから日本語の言語パック(Language Pack)をダウンロードする(xpiファイル)
- Betterbirdの「Add-ons Manager」の画面を開く。(ウィンドウ右上のハンバーガーメニューから「Add-ons and Themes」を開く)
- 歯車アイコンをクリックし、「Install Add-on From File」で言語パックのxpiファイルをインストールする。
- Betterbirdの設定画面を開く。
- Generalカテゴリの「Language」で言語を日本語に変更する。
- Betterbirdを再起動する。
雑感
使用感はThunderbirdと何ら変わりませんし、目的の「mail.folderpane.sumSubfolders」の設定も期待通りに機能したので満足しています。Thunderbirdのプロファイルはそのまま使えますし、Thunderbirdに何かしらの不満を抱いている方は一度Betterbirdを試してみても良いかもしれませんね。






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