「TAKE NOTES! 」を読んだ
「TAKE NOTES! メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる」を読みました。
最近 NotionアンバサダーのTsuburayaさんのツェッテルカステン(Zettelkasten)に関する動画 や 同じくNotionアンバサダーのReiさんのメモに関する動画 等を参考にNotionで自分なりにメモ管理の環境を構築しました。その後ネットでツェッテルカステン関連の記事等を見ていると大まかには同じでもそれぞれ言っていることが微妙に違ったりして(それがその人なりの解釈・メモ術なのだとは思いますが)、そんな流れでニクラス・ルーマンやズンク・アーレンスの言うツェッテルカステンとは本来どのような手法なのだろうかというのが気になり本書を購入しました。
私が知りたかったのはツェッテルカステン関連の記事や動画を公開している人がツェッテルカステンという手法についてどういう解釈をしたりどう自分なりに取り入れたかという所です。本書を読めばその辺りがなんとなく分かるのではないかと考えました。
読んでみたところ、本書はツェッテルカステンの手順や実例のような解説は少なく、ツェッテルカステンの考え方やどれだけすぐれた手法なのかということを繰り返し言葉を変えて説明しているパートが多いという印象を受けました。
個人的には、この本からツェッテルカステンに入るよりも、私のようにWeb上でざっくりと情報を得た上でツェッテルカステンを始めたいと思った人・始めた人がツェッテルカステンについての理解を補完する目的で読むという流れの方が良い気がします。本書は基本的にツェッテルカステンの考え方をただただ述べているだけなので、ツェッテルカステンを取り入れたいと思っても、始め方・入口が「著者の書いていることの真似」ではなく「考え方を理解し自分なりの完成像を思い浮かべた上で自分の好きなようにやる」になっているような印象を受けました。要は実践的というよりも理論寄りという感じで、ツェッテルカステンについて何も知らない状態で本書を読んだ場合、実際にツェッテルカステンの仕組みを手元に用意するのはなかなか難しいのではないかなと…。
「おわりに」(あとがき)のページで以下のように書かれていますが、私にとってはその理論とやらを繰り返し言葉を変えてくどくどと解説しているように思えてしまって、なんともモヤモヤとする読後感が残りました。
ツェッテルカステンのメリットをフルに活用するには、なぜ、どのようにうまく機能するか、そして執筆のさまざまな手順とタスクがどのように組み合わさっているのかに関する深い理解が必要です。単なるハウツー本ではなく、ツェッテルカステンの背後にある理論やアイデアを解き明かす本を書く必要があったのはこのためです。
モヤモヤとする読後感は残りましたが、私としては本書はツェッテルカステンについての理解を補完するという意味で十分に役に立ちました。当初の目論見通り、他の人の解釈についてもなんとなく理解できました。理解を補完できたとかその辺りのことは、私の場合は事前にツェッテルカステンについて詳しく解説しているBob Doto氏のサイトで情報を得ていたからこそそのように思えたという感じです。
そういえば、これは本書が悪いわけではないのですが、ツェッテルカステンの解説記事等でしばしば登場するStructure notesという用語について、本書では「構造メモ」みたいな訳で解説されているわけではないところは、Bob Doto氏のサイト等で背景を知っていないと混乱するかもしれません。Bob Doto氏によると、Structure notesという用語はzettelkasten.deというサイトで使われたことで有名になったそうです。
Today, many call these outline notes "structure notes," a term which has come to prominence through its usage on the zettelkasten.de forum.
Folgezettel is Not an Outline: Luhmann's Playful Appreciation of (Dys)function - Writing by Bob Doto
これの裏付けとして、zettelkasten.deで記事を書いているSascha氏の以下のような発言も見つけました。
The history of structure notes is: They organically emerged out of me pushing the boundaries of my ZK. In hindsight, I might have re-invented the wheel. However, it is not the act of creating headlines etc. that is the interesting part, but the correspondence of the underlying knowledge structures that is the interesting part.
Structure notes and second brain — Zettelkasten Forum
zettelkasten.deの記事を読むにStructure notesというのは要はメモのリンクを構造化した目次のようなメモのことで、そのような役割のメモについては本書では以下のような形で登場しています。以下はメモの役割と私の理解を書いています。
- ある議論やトピックの起点として使うメモ
- (第2章, p68)
- 永久保存版のメモ(Permanent notes)を後から探せるように索引(索引メモ・Index notes)を作るという文脈で登場。つまりたくさんある永久保存版のメモの内、リンクを辿れるような「起点」として使える永久保存版のメモのことを指します。
- 原稿の構成(アウトライン)
- (第9章, p133)
- 本書での「原稿」は本や論文の原稿を意味しています。本書では全体的にツェッテルカステンを運用する上での1つのゴールとして何かしらの原稿を完成させることを前提にしているようなところがあります。
- 索引から直接参照されるようなメモ
- (第12章)
- ツェッテルカステンでは索引について、索引はメモの繋がりを辿る入口で、索引から頭の中にあるアイデアに関連することが書かれたメモに到達するのが早ければ早いほど良いとする考え方をするようです。「索引に書くメモの番号(リンク)の数は控えめにする」という話のあとに先述の内容が書かれているため、要はどれだけ早くメモを見つけられるかを意識すべきであるという理解をしました。
- (私としてはデジタルでツェッテルカステンをやるならタグやフィルター、検索の機能が使えるだろうから索引のキーワード(タグ)にさえ注意していれば索引のリンク数を気にする必要はないのではと思っていますが。)
- 上記のような考え方の上で、概要が必要なほどに大きく発展したトピックへの入口として関連メモのリンクを集めた「索引から直接参照されるようなメモ」が使われるようです。
- 入口として使うメモだということで、これは私の認識では第2章で登場した「ある議論やトピックの起点として使うメモ」としての永久保存版のメモと同じものです。
本書を読んだ上でStructure notesという用語を出している人は、用語そのものは事前に知っていて、その上で上記のような内容のメモがStructure notesだと解釈したのだと思います。
本書は「ツェッテルカステンの考え方を知る」という気持ちで読まないと繰り返し言葉を変えて解説しているパートが多くて嫌になってくるかもしれないので、万人にオススメできる本ではないと思います。単に方法的なことが知りたいだけならWeb上で済ませたほうが良いのではという感じです。ただまあ、ツェッテルカステンについて理解はできるので悪い本では無いと思います。
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